ある一日

「某月某日」
AM5時20分 起床
本日のスケジュールは
PM4時から、ジェットストリームのナレーション録り。
その後
PM9時から、ドラマ「働きマン」のロケーション。
昨日、三ヶ月に亘って撮影していた映画のクランク・アップで
何はともあれ、一本の仕事が終わった後というのは密かな充実
感がある。
そのせいで、いつもより一寸多めに芋焼酎をきこしめしてしま
い、そのわりには早く目が覚めてしまうというのは、歳のせい
だろうか。
目覚めの一服と煙草に火を点け、窓を開けたら、すごく寒い。
まだ暗い。
寒い、という現実から、あるものを連想する。
「寒いといえば・・・寒しじみ」
市場のO君に電話する。
「しじみ、いいのはいってる?」
「宍道湖のがありますよ」
「いいねえ、3キロ取っといてくれる、あさりは、さすがに小
 さいよね」
「ええ、千葉は駄目だけど、愛知産のが、まあまあかな」
「じゃあ、それも2キロ。あとで取りに行きます」
商売の方々で込み合うこの時間は避けるほうが無難だ。
しかも、寒いし、暗い。
ベッドに入ったまま寝覚めの読書。

AM7時30分 0X市場
定期的に、あさり、しじみを買いに行くIM商店。
店先には、新鮮な魚介類が並んでいる。殻牡蠣、ミル貝などの
貝類は勿論、金目鯛、鯖、平目・・・すべて欲しい、すべて食
べたい、イカの美しいことといったら、塩辛作るか・・・いや
時間が無い、おおカレイだ、一夜干しだな、天気もいいし、い
や冷凍庫の余白が無い、我慢、我慢。
無念の想いで、愛知産のあさりと大和しじみを購入。
さて、何故、大量にあさり、しじみを買うのか。
それは、この一点に尽きるからであります。
冷凍保存が出来るから。
便利ですよ。味噌汁の具に困った時は、冷凍庫からしじみを一
掴み取り出して鍋にぶち込めばいいんですから。今日はイタ飯
にすっかとなれば、あさりは、パスタ、パエリアの強い味方で
ござんしょう。
しかし、ただ冷凍庫に入れればいいわけではありません。
強い味方のO君から伝授されたコツを披露しちゃいましょう。
「しじみ」
ネットに入ってるのを(あるいは発砲スチロールの器に)買っ
てきたら、念のために砂抜きを。例えば大和しじみなら、宍道
湖の底の泥や藻や砂を吐かせる。
しじみを平らに並べ、塩水を入れて、涼しい場所に6時間置い
ておく。
塩水の割合は、水1リットルに対して10グラムの塩。つまり
水の量の1パーセントの塩。今回は3キロのしじみに2リット
ルの水と20グラムの塩という按配です。
砂抜きしたしじみを、よく洗います。
まさか洗剤など使わねえだろうな。
でもって、バットなどの平らな容器にしじみを並べます。この
時、しじみが上に重ならないようにするのが肝心なんだそうで
す、なんでだか。
容器の上にラップして、冷凍庫に入れます。
でもって、しじみが凍ったら(丸1日あれば)再び取り出し、
今度はジッパーが付いてる冷凍用の袋の中にしじみをドサドサ
っと入れて、冷凍庫へ。
「あさり」
大抵、砂抜きして売ってます。してなかったら、しじみとは塩
分の量が違うので買った店で聞いて下さい。
あとは、しじみとまったく同じ要領で冷凍庫へ。
あさりは特に上に重ならないようにしないと、口がやや開いた
状態で凍ってしまう。これは見た目に悪い。

その砂抜きの下ごしらえを終えて、原稿チェツクのため自室に
こもる。
一本の原稿に約10分かけて読み込むので、2週間分なら20
本、3時間20分。
終わると同時に、人間だもの空腹をおぼえる。
さて昼飯は何にするか。
冷凍庫を覗く。スペースを少しでも空けておかないと。

AM11時50分 昼飯
娘がパリから暫く帰ってくるというんで取り寄せた、宮島神社
に近い旅館「石庭」のあなご寿司を冷凍庫から出して、蒸し器
で蒸す。
これ旨いんです。ひとつずつ笹の葉に包んであり、二種類あっ
て、赤い飯は黒米、白飯はもち米、中にあなごと椎茸が入って
いて、笹の香りが効いていて・・・。ここのあなご飯も美味し
いが、冷凍出来ないのです。
味噌汁はもちろん「しじみ汁」肝臓が喜ぶ。
電話が入る。頼んでおいた鞄の修理が出来たとの知らせ。
スタジオに入る前に、寄ってピックアップする事に。

PM2時40分
青山のショップ。
旅行用のトランクで一番気に入っているのが、ここで扱ってい
る鞄。
名前が長ったらしいので覚えにくい。
グローブ・トロッター。
初めてこのスーツケースを手に入れたのは、20数年前。ロン
ドンのコンラン・ショップで発見。おもわず清水の舞台から飛
び降りてしまい、2個購入。
以来、この鞄で海外旅行を繰り返し、今や歴戦のつわものの風
格あり。
その後、もう少し小型のが欲しい、長期滞在用に大型のものを
、機内に持ち込めるやつが便利だと、手持ちが増えていった。
その中で一番最後に買い求めた鞄の鍵の部分が壊れてしまい、
一年の保障期間内に修理に出したのだ。
この店で扱ってる物の中で「これ、欲しい」というものがあっ
た。
マッキントッシュのコート。
結構値が張るので、どうするか迷っていたところに、千万一隅
の機会が。
イギリス行きの仕事が入ったのだ。本場で買える。
一緒に同行することになったマネージャーの慎の字に
「イギリス、あれだろ、スコットランドだろ、それって帰りは
 ロンドンから乗るはずだから、ロンドン市内を回る時間はあ
 るよな、と言うか一軒だけ寄りたい店があるんだよ、バーリ
 ントン・アーケードの中にマッキントッシュを扱ってる店が
 ある、そこでコートを買いたい。慎の字も買えよ。一生もん
 だぞ、丈夫で長持ちのコートだぞ、絶好のチャンスだぞ」
「・・・・いいですね。じゃあ、ボクも買おうかな」
「絶対買ったほうがいいよ、孫の代まで使えるぞ」
という話になって、さあイギリス、行きました。バーリントン
・アーケードのショップで実物のコートを手に取りました。と
ころが、なんと
「あれ、日本と値段変わらねえじやん。つーか、日本より高け
 ーじゃん」
「本当ですね、同じもんですか」
「同じ、同じ、品番も同じ、色も同じ、サイズも同じ。ここで
 買っても意味ねえじゃん。なんだ、これ」
「本当、なんだこれですね」
「しかも慎の字の体型じゃ、袖と丈を詰めないと駄目だしな」
「でも、いいですね、これ」
「東京で買おう、青山に売ってる店があるからそこで買おう」
と言う事があり
東京に戻って、この店で件のコートを二人で買い求めたという
経緯があった。
慎の字は、体型に合わせてお直しをして貰いご満悦であった。
俺の方は、なぜかその時横に居た奥様が
「私も一枚買おうかしら、細身のってなかなか無いのよ」
の一言で、余分な散財をする羽目になったのだが。

PM3時45分
虎ノ門のスタジオ
ここは不便な事に駐車場が無い。近くのパーキングを探す事に
なる。
余裕を持っていかないと酷い目にあう。
入り時間の15分前に着いたのに付近のPが全て満車で、10
分遅刻する羽目になった事もある。
この日は、首都高速の渋谷辺りで事故っていて、青山への到着
が大幅に遅れ、本来なら早めに虎ノ門に着いて、近くの喫茶店
に腰を落ち着け、旨いコーヒーを飲みながら、本日の原稿に目
を通したいところであったが、その余裕はなくなり
「しょうがねえ、スタジオのミルク入れて誤魔化さなきゃのコ
 ーヒーで我慢すっか」
と、併設されたロビーに直行した。
お好きなだけお飲みくださいの無料コーヒーを紙コップに入れ
て飲んでいると、ディレクターが前の仕事が押していて30分
遅れるそうですとADが言う。そこへ他のスタジオでの収録を
控えた出演者がぞろぞろ入って来た。ロビーの椅子の3分の2
はその方々で埋まり、業界話に花が咲いて騒がしい。
「だったらスタバでコーヒー飲む時間あったじゃねーか」
と心の中で愚痴を言いつつ、落ち着かない気分で原稿に目を通
す俺。

Uディレクター到着。
原稿の音読み、訓読み、誤字、脱字、アクセント、などをチェ
ックしてからスタジオに入るのだが、けつかっちん(次の仕事
が控えてるので収録予定時間を越えることは出来ない)だし、
周りは騒がしいしで、
「録り始めましょう、原稿、その都度チェックで・・・」
と、第二スタジオに移動。
本番。
下読みを充分してあるので、予定より早めに終了。
「お疲れ様でした」
出しがあるため駈け付けていた慎の字とスタジオを出る。
「今、何時だ」
「7時5分ですね」
「軽く何か腹に入れておこう。向こうの現場、巻いてないんだ
 ろ(予定より早まる事)」
「8時半入りで変わらないです、ロケ現場が9時からしか撮影
 許可が出てないらしいです」
「じゃあ終わりは12時回るってえ事もありうるな」
時間貸し駐車場で車に乗り込み、出庫。
駐車料金 1750円。精算。何か損した気分。
青山墓地下方面に向かう。
「ラーメンでいいか?結構旨いの食わせる店があるんだ」
「私はなんでも・・・なに系ですか?」
「さっぱり系、台湾系かな、焦がしネギが隠し味ってえやつ」
「へえ、いいですね」

目的地に着いて駐車しようと探すが、空いてるスペースが見当
たらない。もう少し先にあるかなとウロウロしていると、後ろ
から来たタクシーがクラクションを鳴らしやがる。狭い道で避
けられず、そのまま直進する。
「今、何時だ」
「7時25分ですね」
「早いけど現場に直行して、近くで探そう、赤坂だよな」
と、ロケ現場に向かう。

PM7時40分 テレビドラマ収録ロケ地
実際は8時半入りなので、50分の余裕がある。
「カレーもいいな、いや、やっぱりラーメンだな、赤坂か・・
 味噌なら、あそこだ、久し振りに覗いてみるか」
何年振りかの赤坂界隈。その変貌振りに驚く。
ほう、こんな所にオイスター・バーが出来たのか。
へー、こんな店あったかなあ。
あれ、何処だっけ、確かこの辺のはずなんだけどなあ・・・。
目当ての店が見つからない。
おかしいな・・あれえ・・・・・おお、ここだ、ここだ、何だ
よ、周りの店が全部変わっちゃったぞ、あらっ隣りにラーメン
屋が出来てる。
人間の心理とは面白いものである。
お気に入りの老舗のラーメン店と新店舗のラーメン店が並んで
いる。目当ては、行きつけの店の味噌ラーメンなのだが、隣り
の店も旨そうだ。どおするどおする。
表に出ているメニューを眺めながら、迷う。
「こっちだったら、慎の字何食う、俺は塩にするかな」
「ボクは、味噌ラーメンがいいです」
「味噌な、そうなんだよ、味噌だよな、でも味噌なら、あっち
 の店の方が絶対旨いんだけどな・・・I(店の名前)は、量
 が多いからなあ、よし、ここ入ろう、時間がもったいない」
慎の字は、迷わず味噌ラーメンを注文し、俺は、やや迷って味
噌ラーメンを。
やがて運ばれてきたラーメンを見て、不吉な予感が。
ドンブリに入った大きな海苔に、白い文字がびっしり書き込ま
れているのだ。
まさか体に毒なものを使ってはいないだろうが、海苔が可哀想
だ、不味そうだ。これは、味のほうも余り期待しないほうが。
「ズルズルズル、ごくん、はふふぁふ、ズルズル、ごくん、は
 ふう・・・・・・・・ごちそうさまあ」
表に出た俺は、隣りの店、Iの厨房に立ち込める湯気を横目に
見ながら思った。
初心貫徹すべきだった。浮気をすると碌なことにならない。
店からもらった次回餃子一人前サービス券を慎の字に手渡し、
俺は歩を早めた。さあ、仕事だ。急がないと遅刻だ。

PM8時35分 ロケ現場
路上に止めてあるロケバスに飛び込む。
ここで衣装に着替えて、メイクをする。
控え室が取れない場合は、このような破目になる。
もし、路上に大型のバスが止まっていて、窓にカーテンが閉め
てあったら、中で女優さんが着替えている最中かもしれない。
ところで、
数年前、アメリカのアクション・スターが主役という映画を東
京で撮影したことがあった。
撮影現場には常に超大型バスが止まっていた。主役専用のバス
である。ここまでは驚くに当たらない。ハリウッド映画では
メインの出演者に個室のトレーラーが付くのは当たり前である
からして。だが、その専用バス、使われた形跡が無い。いつ見
ても運転手が暇そうにぼーっと座っているだけだ。
何日か様子を見ていたが、件のスターがそのバスに居たことは
一度も無い。ピカピカ新車超大型バスの周りには、出演者が数
十人、寒風に身を縮めて足踏みしているというのに。
何故だ、何故なんだ。
事情を聞いて、唖然としてしまった。
スター様は、ロケ現場に来ると、その場所にもっとも近い高級
ホテルのスイート・ルームを控え室にして、そこにお入りにな
るというのである。
じゃあ、このバスはいらねえだろう。
と、貧乏人根性の俺としては、夕飯が海苔入り味噌ラーメンの
俺としては、声を大にしてそう言いたくなってしまった。
まあ、人は人、己は己である。
というわけで、ロケバスの中。
後方部の座席の間にバス・マットを敷いて設えた簡易衣装部屋
で着替えているといった状況に戻る。
「寒いね、さすが夜ともなると・・・」
「現場は風が強いらしいですよ、下着、一応用意してあります
 けど、着ますか」
「おお助かるな、インした頃は暑くてスーツなんか着たくなか
 ったのにね、早いねえ月日が流れるのは」
着替え終わって、メイクをしてもらい、準備万端。
「リハーサル開始します」の声。
バスを出た途端、寒風が吹きつける。
・・・うおー、きついなこれは、じじシャツ用意してもらって
助かったぞ、ひえー。
撮るシーンを一度ざっとおさらいする。つまりリハーサル。
監督以下スタッフが、効率を考えて撮り順を決める。
スタジオで収録する場合は、マルチといって、数台のカメラを
同時に回して、シーンの頭から終わりまでを一気に撮るのだが
ロケでは一台のカメラ、稀に二台のカメラで、シーンを割って
撮るので、段取り良くやらないと時間を食う。
結構長いシーンなので、カット数も多い。
俺の出番はシーンの途中から登場するので、だいぶ先になるだ
ろうと、長年の経験から予測する。
「くうー寒いな、慎の字、出番まで1時間はあると思う。俺
、車の中で待機してるから」
と、我が愛車に飛び込む。
CDのスイッチを入れる。
ビートルズの「ストロベリー・フィールズ」が流れる。
路上に止めてあるので、すぐ脇を人々が行きかうのが見える。
さすがにこの時間帯だ。殆どの通行人が、熱燗、ワイン、芋焼
酎とともに夕食を終えて店を出てきたところであろう。
タクシーを捕まえ上司を送り込んでいるグループ。腕を組んで
歩くルンルン気分のカップル。雄たけびを上げてひたすら盛り
上がっている若者達。
嬉しそうである。楽しそうである。
というか、俺も酒が飲みたい。
曲が「ペニー・レイン」に変わる。
終わって、車ぶっ飛ばして帰ったとしても真夜中。ゆっくり一
杯飲る時間じゃあない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
コンコン。
窓ガラスを叩く音で眼が覚める。
いつの間に寝てしまったのか。慎の字の丸い顔がすぐ目の前に
あった。
「そろそろ出番です、お願いします」
それから数カット、テスト、本番を繰り返し、11時40分。
撮影終了。おつかれさまでした。
急いでメイクを落とし、私服に着替える。
「おつかれさん、良かったね、12時前に終わって」
「まだ終わってないですよ、もうワン・シーン、青山に移動し
 て撮影があるんです、イブさんは終わりですけど」
「ええ、大変だな・・・・ま、頑張って」
「おつかれさまでしたー」
衣装さんとメイクさんの元気?な声に送られてバスを出る。
「お、慎の字、おつかれさん、電車まだあるのか、何処かで
 落っことそうか?」
「大丈夫です、お疲れ様でした、これ、ADさんから、夜食
 だそうです。気をつけて帰って下さい」
「じゃあな」

AM0時1分
首都高速道路で自宅に向かう。
車の流れは空いている。
今日も、一日が終わった。
隣りの座席の上で、おつな寿司の包みがゆれている。
都会の明かりで見る事はできないが、空には満点の星が輝い
ているだろう。
Date: 2007/11/24(土)


「ボウモア?」

「テレビの人ですか?」
ロケ先の山形で、ホテル近くにある
巨大スーパーで買い物をしていたら、
地元のおばさんに声を掛けられた。
テレビのひと?
そう問われて
「ええ、そうです」とは言えず、
「いえ、違います」
と、そそくさその場を離れた。

「千円からでよろしいですか?」
コンビニで水と煙草を買い、
千円札を渡した時の言葉。
ほかに何か違うお金の出し方でも
あるのだろうか?

「そうですねー」
スポーツ系の方々が、
インタビューに答える時に
必ずあたまにつける。
「そうですねー、
 調子は悪くなかったんですが・・・」
「そうですねー、
 雨はほとんど気にならなかったですけど・・・」
「そうですねー、
 ハアハアうまいこと
 ハアまわしをハァー、
 ハアハア・・・」

自分で何か言ったあとに
「うん」をつける。
「今日は、お勧めのものは何があるの?」
「お刺身でしたら、鯛ですねー、うん。
あとは白子の天ぷらかな。うん。
あとはぁ、竹の子ですね、うん。
地酒、いろいろありますよー。うん。」
これ、一番初めに気が付いたのは、
ヤンキースの松井のインタビューの
受け答えをテレビで見ていた時だった。
阪神から移籍の井川も同じ受け答えをする。

「ちげーよ!」
違うよが、いつから
「違げーよ」になったのか?
あるドラマで共演した若い役者が、
台本では「ちがうよ」というせりふを
テスト、ランスルー、本番とも
「ちげーよ」と言っていたのに、
誰も何も言わない。
いつの間に、それでオーケーになったのか?

「・・・してもいいですか?」
それ、取っていただいてもいいですか。
控え室で待っていただいてもいいですか。

嫌だと言ったらどうするんだろう。

しかし、このような事が気になるのは
歳取った証拠なんだろうな。

「プロピア」なるものを始めて付けたが、
これは凄い。あれですよ。
髪の毛のコマーシャルで、
引っ張っても抜けない、
自由自在の髪型にあなたも変身、
というやつがあるでしょう。
何なんだあ、あれは。
と不可解なものを見るたびに
感じていたのだが、納得した。
テレビの2時間ドラマと
映画の仕事を同時期にやる事になった。
しかも2本ともヒゲがあるキャラクター。
テレビのほうは、
お馴染みの網に毛を植えて、
ドンピシャという糊でつけるヒゲ。
映画のほうが予算があるのか
「プロピア」で行きましょう
ということに。

このヒゲ。
実に自然なのである。
間近で見ても判らない。
ひと月は保つという。
試しにはずさず
そのままで家に帰り、
風呂に入って洗顔したが
剥がれなかった。
恐ろしいものが出来たものである。
ブルース・ウィルスが禿げたり
生えたりしたのは、これか。
目から鱗でありました。
因みに、いままでの付け髭は
思いっきり笑うと剥がれやすく、
演技をするのに不便な点が
あった事も付け加えておきたい。

スコットランドのアイラ島、
知ってますか?
その島の、シングルモルトウィスキー、
飲んだ事ありますか?
そのウィスキーを訪ねて
アイラ島に行くという仕事が入った。
もともとウィスキーは
あまり飲む習慣がないし、銘柄も判らない。
シングルモルトは「山崎」や「白州」で
旨いのは判るが。
出発する前に、予備知識として
知っておかずぁなるまいと、
中目黒のバー・カウンターで、
アイラのウィスキーを所望して、
一口飲んで愕然とした。
「くさい。なんだ、これは」
と、心の中で叫び
「不味い」
と、渋い声を発してしまった。
青汁のコマーシャルで
悪役商会のボスが
思わず口にする一言を
思い出していただければ
分かりやすいと思う。

ウィスキー界のほや貝、
くさや、ドリアンか。
一部ファンの間で、
熱狂的支持を受けていると聞き驚いた。
世の中にはいるんです、
臭いもの大好き人間が。
ナポレオンは、
もうすぐ戦場から帰るから
風呂に入らず待つように
妻に手紙を送ったそうです。
あそこも洗浄しないように・・・と。

一杯飲んで、
アエラ島に行く気がかなり失せちゃった。
さらに、我が海外旅行経験の中で、
食い物の不味さでは
イギリス、ギリシャは双璧なのだ。
なにがフィッシュ・アンド・チップスだ。
紅茶で有名なわりには、
出て来るのはティーバックという国だ。
出発が近づくに気が重くなってきた。
「ボウモア」飲んだウィスキーの名前。
「これなどは、まだ癖のないほうですよ。
 もっと強烈なのもありますから」

ところがである。
何とである。
成田からロンドンの長いフライト、
乗り継いで
スコットランドのグラスゴーに到着。
だが、まだアエラ島にはたどり着けない。
一泊して次の日の朝の飛行機で
行かなければならないはめに。

空港近くのホテルに
夕方チェックインして、
夕食は何を?
という現地で出迎えてくれた
女性コーディネーターに、
印度レストランと即答して
「マザーズ・インディア」という店に
腰を落ち着ける。
英国で間違いないのは印度料理である。
しかし3人というのは分が悪い。
いろいろ頼めない。
一皿の量が多いのが難点だ。
「慎の字、辛いのは大丈夫か?」
慎の字というのは、マネージャー。
俺がそう呼んでるだけだが。

なんでシンノジなんですか?と聞かれるので
面倒くさいんだが。
江戸っ子は、相手を呼ぶときに
「よう、慎公」なんて呼んだりする。
もうちょいと親しく同等な感じで
「慎の字」と呼ぶことがある。
そういう由来で付けたんだが、
判ってくれるやつは殆どいない。

「あ、平気です」
「何が好きなんでぇ」
「鳥、ですね」
「じゃー、マトン・ビンダルーと
 チキン・ビリヤーニ、
 ガーリックナンにオニオン
ピクルス。
あと、
ほうれん草のカレーがあれば一皿、
それとビール」
「わたし、それシェアーして、
 少しづつ頂いていいですか・・・
 イブさんはカレーがお好きなんですか?」
「いや、イギリス料理は不味い
 という固定観念があって」
「それが、最近変わってきてるんですよ。
 15年前にここに暮らし始めた時は
 確かに、酷かったですけど。
 結構ヨーロッパで修行したシェフが
 レストラン開いたりして、
 随分と美味しい店が増えたように思います」
「じゃ、明日からのアエラ島も期待できるな」
「アエラでは、あまり期待しないほうが・・・。
 レストランの数も少ないですから」
「・・・・・・・だってよ、慎の字」

この店。味は相当グレード高かった。
量も3人で丁度よかった。
隣のテーブルの9人連れは、
あっけにとられるほど
大量の皿を平らげていたが。

翌朝。
小型の飛行機で
あっという間にアエラ島の到着。
潔いほど何もない島だ。
こんな小さな島に
シングルモルト・ウィスキーの蒸留所が
いくつも点在しているのだ。

そりゃあ、イングランドあたりの
ウィスキー好きなら
わざわざ足を運ぶだろうけど、
こんな遠い島にはるばるやって来る
物好きがいるのか。
と思いきや、
日本からもそうとうな数の人々が
かの地を踏んでいるのである。
どんな人たちが?
ここは、バーテンダーおよび
それを目指す者のメッカなのです。
最近、日本のバーで、
とみにアエラのシングルモルトの人気が
高まっているらしい。
あんな薬臭いやつの何処がいいんだ、
この時点まで、私、思っておりました。

島に到着そうそう、
まずは一軒目の蒸留所、ボウモアへ。
素敵なところだ。
海に面して白い建物がでんと構え、
煙突からけむりがたなびいて。
うっ、このにおいだ。
中目黒のバーで飲んだ
ウィスキーの味と同じにおいが・・・。
工場内で蒸留過程を見学。
いたるところにあのにおいが充満している。

小奇麗なバー・カウンターのある部屋で
「試飲を」ということになり
テイスティンググラスに、
いよいよあの琥珀色の液体が注がれた。
飲む。
うん?日本で飲んだ時より旨いぞ。
これがその時の感想だ。
蒸留所に近い
こじんまりとしたレストランで昼食。
記憶にあるのは、
スープが何だか美味しかったことぐらいだ。
午後から、車で移動してピート掘りを見学。
このピート。
驚いた事に、
一年間で0.1ミリしか堆積しない。
それを専用のシャベルで、
10センチ角、深さ30センチほどの
ピート層を掘って行くのだ。
何万年もの層がひょいひょいと掘られ、
目の前に並べられる。
これを干して、燃料として、
ウィスキーの原料である大麦を燻す。
そのお蔭で、
あの独特の風味が醸し出される。
そう聞くと、ほう
凄いウィスキーじゃないか、
と単純に感動してしまう俺。
この島の土壌は
ほとんどの場所が
ピート層であると聞き、
凄い場所に来たんだと、
襟を正して頷く俺。
なんだ、
いいとこじゃないか、アエラ島。

島にホテルは少ない。
年々増える観光客の受け入れ態勢が
整っていないのが悩みの種だと聞いた。
その中でも、
最も良いホテルの部屋を取ってあります。
ということで、
チェックインした部屋は広いし、
目の前が海という素晴らしい眺めだった。
が、
ノースモーキング・ルームだった。
私は駄々をこねた。
禁煙の部屋に3日間も押し込められるなど
耐えられないと。
どんなに狭くてもいい、
どんなに汚くてもいい、
喫煙ルームに変えてくれと。
コーディネーターは、はたと困った。
「どのホテルも満室なんです・・・」
しかし、彼女も煙草を吸う人種なので、
俺の気持ちが解ってくれて
「スタッフの中の女性ふたりが、
 一軒立ちのコテージ借りてるんですけど、
 もしそこでよければ部屋を交換して、
 ただ部屋は狭いですよ」
「いい、畳一枚分あれば充分、
 いやあ助かった」
ということで、
解いた荷物をトランクに詰めなおして
コテージに移動。
慎の字も、きつねにつままれたように
一緒に移動させられる。
ところが、このコテージ。
充分広い上に、キッチンが付いていた。
「おい、慎の字、
 夕飯の集合時間まであと何分ある?」
「えっと、1時間あります」
「よし、俺、ちょっと出かけてくるわ」

急ぎ足で俺が向かったのは、
目ざとく場所を記憶していた
スーパーマーケット。
野菜コーナーで、
トマト、いんげん、玉ねぎ、
じゃがいも、メロン、桃をゲット。
おお、しょうががある。
ということはあれが出来るなと
肉コーナーに移動して、
豚肉のスライスしたやつを籠に入れ、
ミネラルウォーターのでかいボトル2本、
ビール半ダース、
イタリア産の安いワインを赤、白1本ずつ。
丸いパンを数個。
エキストラバージンオイル・ガーリック入りの小瓶。
精算。
急いで部屋に戻り、冷蔵庫に収納する。
やっと安心した精神状態となったところで、一服。
「イブさん、そろそろ集合時間です」

夕食は予約をしてあるというレストラン。
とくに記憶に残るものなし。
ただ、スープはなかなかの味であった。
全員、バーに移動。
アエラで蒸留されている
全てのウィスキーが飲めるという店。
ここでスタッフの中で
ウィスキーに詳しい御仁の
お勧めをまず1杯。
「ボウモアより個性があると思いますが・・・」
飲む。
うっ、こ、これは。
はっきり言って、
ウィスキーというより薬じゃない、これ。
これに比べれば
ボウモアは全然飲みやすいぞ。
「どうですか、他の蒸留所のも試してみますか」
「い、いや。ボウモアを飲もうかな。18年ものを」
“18年”が出てきた。
旨い。
飲みやすい、味、香り、
ともに申しぶんなし。
いいじゃないか、ボウモア。

部屋に戻り、寝酒ということで
ぎんぎんに冷えたビールと、
小腹が空いたので
いんげんのソテーと、
冷えたトマトに
日本から持参した岩塩をふり、
慎の字と二人で、
アエラ島初日の夜に乾杯。
慎の字、醤油味のいんげんに、
思わず「これ、うまいっす」
日ごろから感情を
表に出さない慎の字の
ポロリと洩らした一言。

2日目。
朝飯は、パンを焼き、
じゃがいもをソテーして、
インスタントの味噌汁に
玉ねぎといんげんを
具としてプラスする。
慎の字、無言でずるずる
味噌汁をすすりこむ。
この日の予定は、
昨日と違う蒸留所の見学。
車に揺られて目的地まで、
およそ30分の小移動。
羊がのんびり草を食んでいる。
山がない平らな台地に
大きな樹木は生えていない。
途中、えんえんと続く
真直ぐな一本の道があった。
行けども行けども
どこまでも一本の道が、
定規で線を引いたように延びている。
こんな小さな島に何故、
飛行場の滑走路より長い道路があるんだ?
「線路を造る予定だった。」
と聞いて合点がいった。

目的の蒸留所が見えてきた。
途端に、あたりに漂う
あのウィスキーの独特な香り。
ボウモア蒸留所では、
これほどまでの匂いはしなかったが。
煙突からは、やはり煙が立ち上っている。
白壁に書かれた文字。
「ラフロイグ」
車を降りて、歩いてゲートをくぐる。
「ここは、強烈ですねー、この匂いは」
と思わず口に出すと
「昨夜、イブさんが2杯目に
 飲んだウィスキーは、ここのです」
「あ、あの薬みたいな・・・」

昨日と同じような蒸留過程を見学。
さらに、ここでは、
めったに経験出来ないことを
二つ体験した。
樽に詰めて、栓をして
寝かせる直前の
ウィスキーを試飲。
室の中で燻されている
大麦が敷き詰められている
煙のもうもうと立ち込める部屋に
入る。
出てきて自分の服の匂いを嗅ぐと、
あの燻製臭が。
しかし、大阪の有名な焼肉横丁で、
着ている衣服に染み込んだ
甘いタレとニンニクのにおいに比べれば、
このスモーキーな香りは芳しいじゃないか。

工場内に充満しているにおいも、
数時間いる間に気にならなくなってきた。
ここでも、バー・カウンターのある部屋で試飲。
12年もののラフロイグ。
飲む。
「あれ、いけるぜコレ、
 本当に昨日飲んだのと同じ酒か?」

昼飯は、さらに違う蒸留所
「アードベック」に併設されたレストランで。
スープが美味しかったくらいの記憶しかない。
スコットランドはスープが旨い
で有名だったのが後に判明、合点がいく。
「我々は、これから小川に天然水を汲みにいってから、
 めずらしい鹿を見物しに行くんですけど、
 お疲れだったらホテルでゆっくりされても・・」
「そうします」
と、即答して、一行と別れコテージに戻る。
「さあて、ビールでも飲んで、散歩に行くか」
「そうしましょう」
といっても、人口3000人の小さな島だ。
町のメイン通りも、百メートほどの間に
店がぽつぽつ点在している程度だ。
おまけに朝から小雨模様で、
昨日より10度は気温も下がっているだろう、
風邪でも引いたらやっかいだし、
時差ぼけもまだ残っている。
「熱い風呂で温まって、昼寝すっか」
「そうしましょう」
「慎の字、夕飯は昨日いった
 バーの近くに印度レストランがあっただろ、
 あそこでどうですかって聞いてみてよ、
 別行動とってもいいけど
 人数がいたほうが色々食べられるからな」

結局、夕食は総勢8名で印度料理店へ。
俺は、
マトンのビンダルー
ベジタブルカレーをオーダーして、
他の人の料理をすこしづつ摘む。
グラスゴーの店が旨かったために、
期待はずれに終わる。
いや、皆さん、外した様で申し訳ない。
例によって、
バーに移動してウィスキーの飲み比べ。
「お昼に寄ったアードベックを飲んでみたいな」
「アードベックも相当癖がありますよ」
飲む。
「本当だ。でも、これもいけますね」
「私的には、ブナハーブンが
 一押しなんですが、
 イブさんも試してみますか」
「飲む飲む、この際なんでも飲む」
ブナハーブンがグラスに入れて
運ばれて来た。
飲む。
「うっ、これはくさい、
 俺の好みじゃないな、
 口直しにボウモアを一杯」
ところで、
我々はウィスキーを
どのように飲んでいるでしょう?
水割り?ロック?ストレート?
正解は水割り。
ただし、氷は入れない、
水の量はウィスキーと同量以下におさえて。
20度に近い状態で飲むのが、
一番美味しく味わえるらしいです。
「もっとも理想的な飲み方は、
 アイラのピートを含んだ
 湧き水で割って飲むんですけど、
 明日、汲んできた湧き水を持ってきますよ」
かくして夜は更けていった。

3日目。
この日も朝から小雨が降り注いでいる。
この時期のアエラ島は、
毎日こんな天気が続き、
一昨日のように青空と暑いくらいの
日差しはめずらしいらしい。
この日は、別班で動いていた
雑誌チームのほうでの撮影。
天候の具合を見ながらの撮影なので、
待ち時間が多く、
数カットを撮るだけなのに
結構な時間まで拘束される。
もうひとつ悔しい事が。
町の小奇麗なレストランで、
生がきとウィスキーを
目の前にしたカットの撮影があった。
なんだ、生牡蠣があるじゃないか。
この店、素敵な雰囲気だし、
味も良さそうだぞ。
こんな店があるのに何で教えてくれないんだ。
「慎の字、昨夜はここで
 食えばよかったな。失敗したな」
撮影班のディレクターが言う。
「我々は一昨日ここで食事しましたけど、
 美味しいですよ。でも、大人数だと
 予約が取りにくいかもしれないな。
 あ、生牡蠣にアエラのウィスキーを
 ちょつと垂らして食べてみて下さい。
 ここに来たら皆
 それを楽しみにしてるらしいんです。」
ボウモアを垂らしてひとつ口に入れる。
たしかに、なかなかの味わいだ。
知らないで帰るところだった。
「今夜は、ここにしますか?」と、慎の字。
「いや、きょうは西洋料理から離脱したい。
 部屋食にしよう。
 団体行動も、連日だと疲れる」
「このあと海辺でワンカット撮ったら、
 イブさんの撮影は終わりです。
 我々は漁師さんとの撮影があるので、
 もし漁で蟹か美味しそうな魚が取れたら、
 夕方部屋のほうにお持ちしますよ」

夕飯は、部屋食。
メインは、豚のしょうが焼き。
オイルをひき、豚と、擦ったしょうが、
持参の生醤油、日本酒代わりに
白ワインを垂らし、ジュウジュウ焼いて、完成。
いんげんを湯がき、トマトを湯むきして
醤油をかけて、付け合せに。
さらに、レトルトパックの白飯を温めて皿に盛る。
赤ワインで、乾杯。
日本だ。
日本の正しい食事だ。
胃が喜んでいる。
「慎の字、どうだ、うまいか」
慎の字君は、
ワインなどそっちのけで、
豚肉を食いちぎり、
白飯をばくばく頬ばり、
あっという間にたいらげた。
「うまいです。やっぱり、うまいです」
「な、やっぱり、俺達は日本人なんだよ。
 ようし、ワイン一本空けたら、
 バーに繰り出そう。アエラ最後の夜だ。
 どうせ、他の連中も集まるだろう」
案の定、全員バーに集まり、
ウィスキーで乾杯。
明日は、グラスゴー。
こんな優雅な旅が、
仕事がらみで出来るのは
もう二度と無いかもしれない。

と言う訳で、
人間の味覚、嗅覚というものは、
いい加減なもんなんです。
あれほど、
なんだこのウィスキーは!
と言っていたものが、
結構いいじゃないか
と気に入るようになろうとは。

話しは急に変わる。
「イブさんのブログって、
食べ物の話が多いですね」
と、指摘されて、
自分でもそうだなと思う。
食うことが好きなのは事実だ。
食い物の話は、
当たり障りがないというのもある。
政治経済を語っても胡散臭いし、
自分の考えを人に喋ってもなんだしな。

最近読んだ本で、
ほおーと思ったのは
仏壇を拝むじゃないですか。
仏壇というのは仏様を祀るところだ。
位牌は、荒御霊なのだ。
仏壇を拝むのは、
儒教と神道と仏教が
ごちゃ混ぜの行為なのだ。
って、これは俺が面白いと思っただけで、
だからどうしたでしょう。

でも、できるだけ多くの人に
読んでもらいたい本を一冊。
「空とぶブッダ」
 正木高志・著
 (有)ゆっくり堂・発行
TELおよびFAX:03−5637−7447
ちなみに、この本を一冊買うと、
苗木を一本植えることができます。
Date: 2007/10/15(月)


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